» 2013 » 4月のブログ記事

ホールの音響設備(録音機材や出力のための機材)がようやく全てそろい、システムが完成しました。計画から購入の手配、必要な工事を一手に引き受けて下さったのは北村喬さん。実にあの大雪のスタインウェイ搬入の日も、そしてその日よりずっと前から現場に入って自ら工事をして下さっていました。
気の遠くなるような長い時間と労力を費やして下さったのですが、私たちは仕事で物々交換をしたのです。彼が工事を担当してくれるかわりに、私は彼がプロデュースするコンサートで無伴奏のヴァイオリン演奏をし、その収益を全て東北の復興支援のために寄付をすることにしています(演奏会は八王子のいちょうホールで9月7日)。しかししかし、北村さんのお仕事には感謝、感謝であります!!
さて、ホールでそういう演奏もあろうかとスピーカーも購入をしたのですが、スピーカーの音質をこなれさせるために30時間くらいは音を出していてね。と北村さんにアドヴァイスを受け、ホールには今アイボリーのスピーカーがスピーカースタンドで鎮座しています。
そこで私がはじめに投入したCDは意外に思われるでしょうが、Y.M.O.
朝の連ドラ「あまちゃん」でY.M.O.の「君に胸キュン」のメロディでノリノリのコアラ君を見て、もしかすると彼にはテクノも合っているかも。と思いつき、昼寝明けの超ご機嫌斜めの彼をホールに連れてゆき、Y.M.O.初期のCDを聴かせたら、ピタリと泣きやんで、リズムに合わせて体を動かしています。泣く子も黙るY.M.O.!10代最後に私が購入したテクノのCDです。当時私は慶応大学でコンピューター・ミュージックのサークルの幽霊部員だったのですが、その私が初めてバンドのためにアレンジして演奏した曲がY.M.O.のRYDEENでした。
その後、何年も経って元Y.M.O.のメンバー(この表現が正しいのかどうかよく分かりませんが)の坂本龍一さんのプロデュースで、オーチャード・ホールなどでバッハのシャコンヌを演奏できたことも、良い思い出ですね。その話をコアラ君にしてみたら、分かったのか分かっていないのか「うん。」と言い捨てて、踊りまくっております(笑)。

君のおもい

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今日は午前中に生徒さん3人のレッスンをしたのですが、一人はJ.S.バッハの二つのヴァイオリンのための協奏曲の全曲を仕上げているところです。10代前半の彼は第一ヴァイオリン、私が第二ヴァイオリンを担当してのレッスンでした。
中学時代という難しい年代の真っただ中の少年。2歳の時からのお付き合いで、良いところも悪いところも知り尽くしているような彼ですが、そう簡単ではなく、人間はどんどん変化します。
自分の意志とは無関係に身も心も成長し、新しい自分に戸惑いながら、逃げてみたり向き合ったりして、戦っている少年。この年代の若者との言葉でのコミュニケーションは、時に適切なのかどうか迷いながら、手さぐりな雰囲気がどうしても出てきます。
しかし、こと音楽となると、なんて少年はまっすぐで豊かなんだろう!
感動を抑えない。素直。もっと良い演奏をしたいという、回遊魚さながらの勢いが、音からピチピチと溢れ出て、その音色は勇敢そのもの。アンサンブルの相手とより良い音楽を作り上げようという優しさ、思いやりから無意識のレベルで自在に変化する甘く透明感のある、しかし存在感と、人間としての重みのある音色。
いつも少年との合奏の後、そのまっすぐな気持ちを受け止められた、充分に伝えてもらったということに、誰へともなく感謝の念が湧いてきます。
それだけの熱い熱いおもいを、どうか音楽以外の君の生きる道でも、気付いて受け止める人が出てきますように。そして君がそれを素直に表に出せる日が一日も早く来ますように。私はそんな祈りを、音楽で彼に返します。

バッハのソナタの2番Graveとともに目覚めました。目覚めながら頭の中で音楽が鳴っているのはいつものことですが、今日は言葉が浮かびました。
「何者かである以前に自分は自分だ」と。
こんな簡単なことを、もう長いこと忘れていた気がします。だから春の緑の美しさも、日の出や入日の空の美しさも、どこか膜が張ったようにまっすぐ心に入ってこなかったんだ。と腑に落ちた瞬間、ドサッと鎧かぶとが取れたように身も心も楽になりました。
昔私がいろいろな方にすすめられても、外国を拠点に音楽をやりたくない理由として、「子供の頃にエクアドルから戻って日本になじむのに何年もかかった。ようやく日本を好きになって、日本人だという自覚を手に入れて、今の自分がいるのに、また外国に行ってしまったら、それを失ってしまいそうだから。」と母に話すと、母は即座に「どこにいようと、あなたはあなたよ。」と答えました。それは目からウロコの言葉で、近頃特によく思い出していた言葉です。
なのに私はその日本に居て、いつのまにか自分ではなくなっていました。自分より一つ浅い「役割」としての自分をこなすことに精いっぱいだったからでしょう。「どこにいても自分は自分。でも、どこにいても自分を置き去りにしたら、自分は自分でなくなる。」今日からこのようにこの言葉を解釈し直そうと思います。
今取り組んでいるバッハの無伴奏ソナタ1、2、3のフーガの中で、バッハはBACH(シの♭、ラ、ド、シ)のパターンを何度か登場させます。1、2、3でそれぞれフーガのコンセプトは異なりますが、愛する者を失った悲しみにもがき苦しむ心情や、祈りを通して自分の心を浄化し、暗いトンネルを抜けた明るさを、広い宇宙のような規模で朗々と歌い上げる中に、ところどころBACHの音型を登場させ、バッハは「自分」というもの、人間の生というものを問い続け、追い続けたのではないか。私は彼の無伴奏ヴァイオリンのソナタとパルティータを全曲をそのように解釈しはじめています。こういった解釈も今回、私の気付きの扉を叩いてくれたのでしょう。
役割は大切なものですが、それを支えるオリジナルの自分はもっと大切ですね。音楽が、美しいだけでは不十分であるように。

本当は一心地ついている場合ではないのでしょうが、ようやく少し、精神的にも物理的にも普段の生活を営めるようになってきました。3月の頭からノンストップで暴走してきたのですが、家やホールのメンテナンスのパターンがつかめてきて、やり残していることもまだ少しありますが、首を回してあたりを見回す余裕がでてきました。
いただいたお花たちは少しずつ枯れたものを取り除きながら、活けかえては楽しんできましたが、残すところ一鉢分となりました。ずいぶん長く咲いてくれました。コアラ君も毎日「ニョーイニョーイ、ターシャンも、ニョーイしよ!」とお花の香りを私にもすすめてくれていました(笑)。ありがとうございました。
現在はバッハの無伴奏ソナタの1、2、3番を5月の本番に向けて準備中です。なにしろ心に潤いが無ければ成立しない作品群ですので、自分を追い込みすぎないのがこれからしばらくの課題です。
美味しいコーヒー、美味しいお菓子、もちろん美味しい食事、窓からの遠い眺め、コアラ君の笑顔、ネコたちのいたずら。好きなものに目を向けて、浸って、心の弾力を取り戻すべし。急いだところで一日の速さはかわらない。

一昨日、オープニングコンサートを終えて、いよいよミエザホールがオープンしました。
ホールのパンフレットはオープン二日前に届き、その直前はパンフレットの修正やオープン準備の買い物。それに遠い過去のような気もしますが、その前には引越しの後片付けと、セキュリティーやらいろいろと入居後の手配や仕上げの工事で大忙しの日々を過ごしておりました。先月の27日にパソコンのネット環境がととのったにもかかわらず、更新する時間がまったく無く、申し訳ありませんでした。
こちらで生活し始めて面白かったのは、二日に1度ほどインターホンを鳴らし、ホールについて話を伺いたい。という方が誰かしら訪ねてこられたこと。予想もしなかった事態で、嬉しかったです。

さて、オープニングコンサート。

今までで一番ハードな本番でした。演奏会の一週間ほど前から分かってきたのは、今回のオープニングコンサートとは、「ホールのオープン」と「コンサート」を同時に私が担当するということ。実際的なオープンの準備と演奏会の音楽の準備は、精神的な開きがとても大きくて、バランスをとったり気持ちを切り替えて集中するのが、ちょっと大変でした。
しかし本番では、演奏者に徹するという姿勢で(いつもより演奏の合間のお話は出来ませんでした。ホールの管理者のモードに切り替わってしまいそうな気がしたので)、渾身の演奏が出来たと思います。お客様方のあたたかい笑顔、そしてどんどん活き活きと輝いてくる皆さんの表情、客席から沸きあがってくる熱気。それを感じてますます興に乗る私と水月さん。その循環が非常にスムーズで臨場感に溢れ、あらためて良い空間が作れたと実感しました。この近さ。しかし圧迫感の無い伸びやかな音。皆さんの表情からどんどん元気をいただける空間。
ああ、、好きだなぁ。建物だけではダメ。そこに奏者が入ってリハーサルしているだけではダメ。演奏を楽しむお客さまがやって来て、音楽が生きて循環するコミュニケーションとそのあたたかさ、楽しさがあってはじめて、ようやく音楽ホールは完成するのだと理解した瞬間でした。ミエザホールのオープンをコンサートで迎えたことは、大正解だったのです!
今回のコンサートで、70名ほどの満席で利用してみての音響や温度の管理は満足できるものでした。また、車椅子でご来場下さったお客様からは「音楽が大好きなのに、コンサートホールは意外にバリアフリーじゃないんです。だから車椅子になってからはずっと音楽会に出掛けられなかったけど、ここだったら来られます。また必ず、必ず来ます!本当に楽しかった!」と目を輝かせて言っていただきました。また、「このホールの音響だったら他の方のコンサートにも来たい。ご案内ください。」と皆さんからいただいたお花言って下さるお客さまや、「前から2列目にいたのに、目を閉じて聴いていると広い空間で音楽を聴いてるみたいで本当に気持ち良くて、たまに目を開くと、うわっ!意外に近い!って、ビックリするのが面白かった(笑)。」というコメントもありました。音響、演奏ともにご好評いただき、またご招待していた何名かのピアニストの皆さんは終演後に皆さん試奏してピアノも絶賛していただき、「もう予約出来ますか?人気のホールになりそうだから早く予約を入れないと。友人たちにも配りたいからパンフレットたくさんください!」と慌ててくださる方も居て、嬉しかったです。

さぁ、新たなスタートを切りました。これからです!!
あたたかい音楽の発信地となるべく、ミエザホールが動きはじめました。
まさにオープニングコンサートのサブタイトルどおり、産声とともに、根をおろしたのです。

最後に、皆さんからいただいたお花の写真をアップさせてください。どうしても残したいのです。

皆さんからいただいたお花  皆さんからいただいたお花