一般のお仕事をやめてヴァイオリンで仕事を始めたころ、前の仕事のお客さんだったフレンチレストランのオーナーシェフから、「橋口さん、どんなものを演奏していくの?例えば、〇〇っていう曲は難しいの?そういうのをガンガン弾いて行くのかな?」と聞かれたことがあります。私はその曲そのものについてはコメントせず、こんなことを答えました。
「シェフは、誰にも作れないような最高の目玉焼きを作って料理に出してくれって言われたらどうします?」
彼は「う~ん!」と腕組みをして、「それはめちゃくちゃ難しいかも。でも燃えるなぁ!(笑)」
「それなんですよ、たぶん演奏の醍醐味って。技術的どうこうっていうより、シンプルな素材をシンプルに調理する。しかもプロとして、かつ自分らしく。それって難しいけど、真髄って感じしません?そういう誰でも出来ることで、お客さんを唸らせたりゾクッとさせられるようになりたいです。」
と言うと彼は、「すんごく解りやすい例えだった。橋口さん、頑張ってね。俺も最高の目玉焼き、頑張ってみよう。」
と言ってくれました。
なぜそんな話をするかというと、近頃、ポーチドエッグにハマっています。数年前に家で作る温泉卵にものすごくハマった時期がありました。卵って気温や天候(気圧で)、茹でる時間や置き時間が変わる、とても繊細な食材です。ポーチドエッグではなかなか理想の白身の固さと黄身の固さにたどり着けていません。少し気分転換して、とりあえず数年前にハマった温泉卵に立ち返ってみようと思い、ただいま「峠の釜めし」の容器と蓋を使って温泉卵を調理中なのです。そして作り始める時ふと、目玉焼きについてシェフと10年以上前に話した会話を思い出しました。
卵って奥が深い。シンプルで、理想にたどり着くのが難しくて、なんだか最高!!
をいつも更新してくれている夫が、アキレス腱を完全断裂してしまいました。
不幸中の幸いですが、断裂の翌々日には手術を受けることができ、その翌日には退院もしたのですが、下半身麻酔の後遺症で頭が痛いと唸りながらかれこれ6日間、ベッドとソファーと食事の間のみを移動する日々を過ごしています。断裂前にブログは更新されていたのですが、そんな状況でしたのでFacebookへのアップが遅くなりました!遅れてすみません!
10月から明日4歳になる、幼稚園の年少さんの女の子にヴァイオリンを教えることになり、今日がその初レッスンでした。
ミエザホールの建物を建てるために一時的に住んでいた隣町で、コアラ君が1歳になる前から2歳半まで、毎日のように仲良く遊んでいたお子さんです。
女の子のママとは、子育ての悩みをポロポロ打ち明けあった仲で、私自身が母親になって、初めて出来たお友達でもあります。
住む場所も離れ離れになり、子供が幼稚園に通うようになった忙しさから、近頃ではあまり会うことも出来なくなっていたのですが、嬉しい縁で、こうして娘さんと新しく、師弟関係を結ぶことになりました。
砂場でネコのウンチを見つけては、ママ達で右往左往したり、子供を抱えてトイレにダッシュしたり、ベンチに雀の様に並んでお茶を飲む子供たちを「可愛いですね。」と言い合いながら幸せいっぱいで眺めていたあの当時を懐かしく思い出しながら、こんな展開になるとは当時、まったく想像もつかなかったなぁ。と思います。
人の縁とは本当にどう転がっていくか分からないものですね。
しかしその縁以上に、音楽という奥深い世界に一歩足を踏み入れた小さな女の子を、しっかりと導き、サポートして行きたい。と、あらためてその責任に、身が引き締まった初レッスンでした。
子供の感性というのは本当に面白いもので、今朝、ピアノで「ほたる来い」を弾いていたコアラ君、「あっちの水は苦いぞ」の所では苦い音、「こっちの水は甘いぞ」の所では甘い音を出そうと、お腹の底から指先に、最大限の集中力で音を伝え、本当に苦い音と甘い音を弾き分けておりました。こういう感覚にはやはり、音楽を生業とするものは感動させられます。人間にとって音楽とは何か、人間にはなぜ音楽が必要なのかを、ライブで見せてもらえるのですから。
そんなコアラ君。先日、お風呂上がりに一緒に着替えをしていますと、私に上着を渡してくれました。「お!コアラ君、ありがとう。」と言うと、「いいよ。だって僕ね、お母ちゃんのこと、だいじにだいじに、そだててるんだ!」と澄まし顔でパンツをはいておりました。思いがけない言葉に母ちゃんは爆笑!「いやぁ、ホントにその通りだよ。あなた正しい。お母ちゃん、育ててもらってるよ。」と言うと、当たり前じゃん!という顔でうなづいていました。一体どこから、子供たちの考えは降ってくるのでしょう。
ところで昨日は「時の終わり」のためのリハーサルでした。途中で昼食をとったとは言え、10時半から6時過ぎまでみっちりでした。
疲労のあまり、10歳老け込んだ感じです(笑)。今日は抜け殻状態で、お弁当持ちで午前中からコアラ君を府中の森の水遊び広場に連れて行って帰宅後、珍しくゆっくり過ごしています。
を、公演ラインナップの方で画像公開致しました。ぜひご覧ください!
ミエザホール 橋口瑞恵
チケットのお申込み ミエザホール 043-366-6316(橋口)
昨日、旧名イーハ・デ・アライのデビューコンサートを無事に終えました。
無事、、、とはいうものの、赤ちゃんの楽器を昨日のように鳴らすところまでは本当に大変で、4月にイーハ・デ・アライで練習を始めてから、もともと自分が使っていた楽器とのミリ単位、あるいはそれにも満たない小さなあちこちの寸法の違いから、奏法へのフィードバックが苦難の道のりとなり、肩は壊すは、首は壊すは、歯はかけるはで、えらく大変な日々を過ごしておりました。時間の許す限り、ギリギリまでとにかく楽器を手にして少しでも折り合いを良くしようと、崖っぷちの心境で、暇さえあれば楽器と対峙する日々でした。
そんなに大変ならやめてしまえば良いではないか。と思われるかもしれませんが、音楽家が、そこに何か良くなる可能性を見出せば、身体を壊そうが何しようが、後戻り出来るものでもありません。もはや、ライトに集まる蛾のように、自分で止められるものでもないのです。
さて、このイーハ・デ・アライ、練習していく中で、すっかり「娘」(イーハ・デ・アライは荒井の娘)という雰囲気でもなくなり、早急に改名の必要がありました。昨日はコンサートの前に皆さんに紙をお渡しして、何か名前を思いついたら書いてください。とお願いしていたのですが、皆さん本当に面白い名前を色々と考えて下さいました。ジャンヌダルク、碧い狼、ギャラクシー、リオン、イーハ・デ・バルバラ、ブランカ、青い馬(シャガール!?)、などなど。皆さん、素敵な名前を真剣に考えて下さって、本当にありがとうございました。
中でも私の心に引っかかって離れなかったのが「春の稲妻をイタリア語で」というもの。さっそくネットで稲妻や雷をイタリア語で調べましたが、どうも言葉の響として毎日、自分が口にするには「他人」な響でした。やはり、「ポチ」「花子」ではないけれど、たとえ大きな存在と感じていても、名前には呼んで恥ずかしくならない、音にしてみた時に心が変にざわつかない身近さが欲しいところです。そこで思いついたのが和名の「春雷」。ただ音にして「シュンライ」でも呼びやすいし、ジャパニーズ・ブランドの楽器を胸を張って使っていくぞ。という決意でもあります。どうだ、これが日本のモダン・ヴァイオリンだ。またいつかイタリアや南米で演奏した機会に、楽器のことを聞かれたとき(彼らは必ずといって良いほど楽器のことを聞いてきますので)、「シュンライ。日本の荒井節夫の作品です。」と胸を張って答えたいと思います。
演奏後に荒井さんと久我さん、二人のヴァイオリン職人さんとシュンライについて熱く語りました。私がもともと使っているレッド・ウルフ(1740年 イタリア ジェノバ産)はかなりネックが細く、シュンライのネックを太く感じて自分で削った話や、ファースト・ポジションでの弦と指板の距離を深く感じていることなどを話し、松本にお住いの荒井さんに次回会う11月の弦楽器フェアで弦の深さの方は修正して頂くことでいったん話がまとまりました。お二人はこの短期間でのシュンライの音の変化について、「ここまで成長させるのは、橋口さんにしか出来ない」と強くうなづき、また、今後の音の変化を細々と予知、保証してくれました。その話は、私もすでに手ごたえとして感じている話だったので、今までにないくらい三人は共感し、ワイワイと意気投合して別れました。演奏家と職人がお互いに大好きな楽器の話で盛り上がるって、楽しい(笑)!
そして今朝のことです。
コアラ君を幼稚園に送りに行く準備をバタバタとしていると、荒井さんから電話がありました。「色々考えたんですがね、やっぱり」今日、ミエザホールから30分ほどの娘さんのご自宅から松本に帰る途中に寄って、シュンライを持ち帰って必要な調整をした方がいいと思うんです。とのこと。もちろん二つ返事でお願いしました。幼稚園にコアラ君を送って戻ってくると、荒井さんはもう到着していらっしゃいました。ウルフのネックを測ってもらって、なるべくその仕様にシュンライのネックを近づけてもらうことになりました。荒井さんの名誉のために説明したいのですが、これらは決して不具合ではなく、私の個人的な奏法や指運びに仕様に合わせる、完全にオーダーメイドな微調整だということを明記しておきます。また、荒井さんのご厚意とより良い音探求の熱意によって、今より1ミリくらい低い駒と、去年、素晴らしく良い材質の魂柱が手に入ったので、それを新しく付け替えてくださることにもなりました。この上なくありがたいことです。そしてなんと、これらの全てを「プレゼントの延長でやりますよ。」と言って下さったので、私の方はいつか、荒井さんのホームグラウンドの松本で、お礼のコンサートをさせてください。と微々たるお返しではありますが、お願い致しました。
シュンライは一週間ほどで生まれ変わって手元に戻ってきます。戻って一週間くらいはまた少しお互いに様子を見合うことになりますが、その変化を花開かせることが、今からもう、とても楽しみです。
出会いのその先に、関わった人が必ず新たな希望を見出せる。情熱と情熱の結びつきとは、そういうものなのかもしれません。何かにのめり込むって、素晴らしいことではありませんか?
東京もとうとう梅雨入りしました。雨の中、合羽を着て幼稚園とスイミングの送り迎えに走り回る日々の始まりです。元自転車部としては、こんなことで弱音を吐くわけにはいきませんが、この雨が恵みの雨となり、今年は各地で災害をもたらさないことを願っています。
さて、ずいぶん間近になってしまいましたが、今回は無伴奏で、荒井節夫さんの製作したヴァイオリンのデビュー コンサートのご案内です。
4月の演奏会の翌日から、荒井さんの楽器(イーハデアライ)での練習に取り組んで来ました。荒井さんにはミエザホールのオープンに際し、2012年製のヴァイオリンを一挺贈って頂いていて、いつかそのデビュー・コンサートを開くことをお約束していたのでした。よもやこんなに早くその日が来ようとは、その時は予想もしていませんでしたが、、、
急ピッチでイーハデアライとの関係を深め、自ら調整し、これで行けると確信したのが10日ほど前。更に今回の演目に、私と音楽との間に楽器が介在しなくなったと思えるまでに今までかかり、ご案内が遅くなった次第です。
今回の演目は、バッハのシャコンヌとフーガ。若くして亡くなったバッハの最初の妻で従姉妹のバルバラへの想いを凝縮したシャコンヌ。彼女の死を乗り越え、前向きに生きることを模索しているバッハ自身を表しているようなソナタ3番のフーガ。そしてこの二つの作品を独自の解釈と展開で全く別な、斬新極まる世界への入口としたバルトークのシャコンヌとフーガを含む、バルトーク無伴奏ソナタの全曲。
バルトークの無伴奏ソナタは2月にも演奏しましたが、反響が大きく、もう一度聴きたいという声が多かったことに加え、演奏し終わってもバルトークへの興味は増すばかりで、更に彼への理解を深めたいという思いが消えなかったことが、再演の理由です。
この3年半というもの、24時間共に過ごしていた息子が幼稚園に通い始めたと同時に、イーハデアライとの新しい関係が始まり、数年ぶりに自分の中に蒼く尖った、未熟者の情熱がふつふつと燃えあがっていることが、嬉しくてたまりません。
今を打ち崩すことは、クリエイティビティにつながると信じ、あとは突き進むのみであります。
では、29日にご来場くださる方は、ご連絡ください!
皆さま、ショウナンラグーンと父の応援、ありがとうございました!とても残念でした。父がいつも言っているように、競馬は最後まで分からない。本当にその通りなのでしょう。でも、皆さまの応援は本当に嬉しかったです。
さて、猛暑が続きますが、ミエザホールの屋上では今日、今年初めての収穫がありました。こちらに引っ越して来て、もう畑はやらないと思っていた私ですが、結局蓋を開けてみれば食べれるものをワサワサ植えてしまい、ニンニク、ジャガイモ、イチジク、ブラックベリー、プルーン、(勝手にはえて来た)ミントとクレソン、ブルーベリー、サツマイモ、キュウリ等が育っています。今日の収穫はジャガイモのメークイン。採れたてをふかし、バターを塗って食べました。コアラ君はどちらかというとジャガイモはちょっと苦手。でも自分の手で土から掘り出して、そのベージュのつやつやの肌から土を落とし、丁寧に洗ったジャガイモは格別に美味しかったらしく、「うまい、うまい。もっと食べたい!」と喜んでおりました。ホホホ、、、それこそ母ちゃんの思うツボなのだよ、コアラ君!
明日あたり、モスグリーンのイボイボ・キュウリが初めて収穫できる予定です。やっぱり、自分の手で野菜を育てて収穫するのって本当に楽しいです。美味しいし!
最近のコメント